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大人から始めてもヴァイオリンは上達する?
現実と上達する人の特徴

結論から言うと、大人からでもヴァイオリンは上達します
ただし実際には、順調に上達していく方は2〜3人に1人ほどという印象です。

ヴァイオリンは、取り組み方によって上達のスピードに大きな差が出やすい楽器です。

これまで多くの大人の生徒さんを見てきて、上達が早い方にはいくつか共通点があることに気づきました。

この記事では、大人になってからヴァイオリンを始めて上達する人の特徴をまとめています。

筆者プロフィール

ヴァイオリニスト井阪美恵 Atelier Belle Sonorite

井阪美恵
ヴァイオリニスト


桐朋女子高校音楽科を経てローザンヌ高等音楽院を首席卒業。ザルツブルク・モーツァルテウム大学大学院修士課程を満場一致の最優秀で修了。帰国後はソロ、室内楽、オーケストラなど年間50回を越えるコンサートに出演。テレビ朝日「題名のない音楽会」に若手ソリストで構成した「特別編成オーケストラ」で出演。

演奏活動と並行して、少人数制のヴァイオリン教室 Atelier Belle Sonoriteを主宰。

講師プロフィールはこちら

大人からヴァイオリンを始めて上達する人の特徴

1. 模倣(まね)や再現が上手い人

上達が早い人の特徴として、模倣(まね)や再現が上手いことも挙げられます。

ヴァイオリンは、言葉だけで完全に説明できる技術ではありません。弓の動きや体の使い方、音のニュアンスなどは、実際の演奏を見たり聴いたりしながら少しずつ身につけていく部分が多い楽器です。

そのため、先生の演奏をよく観察し、音をよく聴き、「この音をまねしてみよう」「この動きを再現してみよう」と考えながら練習できる人は、上達が早い傾向があります。

いわゆる「筋がいい」「センスがある」と言われる人は、この模倣の能力が高いことが多いように感じます。空間認知や身体感覚など、ある程度の個人差はあるかもしれませんが、よく観察し、よく聴き、良い演奏を取り入れていく姿勢が、結果として大きな差になっていきます。

2. 内容を正確に理解できる人

上達する上で一番大きなポイントは、レッスンの内容を正確に理解できるかどうかです。

自分の聞きたいことだけを聞いていたり、言われたことをすぐに忘れてしまったり、「自分フィルター」を通して独自の解釈をしてしまう…こういう方はほとんど上達しません。シンプルに考え、順序を追って練習を進められる人ほど、効率よく上達します。

また、アドバイスをきちんと練習に活かせることも重要です。大人の方は熱心に練習されますが、つい指導と違う方向で長時間弾いてしまうことも少なくありません。しかしヴァイオリンでは、「どれだけ長く弾くか」よりも、何に意識を向けて弾くかがずっと大切です。短時間でも、レッスンで教わったポイントに集中して取り組む人ほど、効率よく上達する傾向があります。

つまり、上達する人は、インプットの段階でレッスンの内容を的確に理解し、アウトプットする際にも意識を持って練習できる人です。このようにシンプルな習慣を積み重ねられるかどうかが、ヴァイオリンの上達に大きく影響します。

3. 主観と客観のズレが少ない人

鍵盤や自分の手の形を確認しながら演奏できるピアノに比べ、ヴァイオリンは弾いている姿を自分で見ることができないので、フォームの崩れ、ボウイングの乱れを自覚するのが非常に難しい楽器です。

また、音程は耳が音程を聴き分けられるようになるまでは自分で判断することはほぼ無理ですし、リズムや音色なども、一生懸命弾いていると自分の音を聴くことを忘れてしまっているケースが多々あります。

レッスンでは、そうした自分では気づきにくい部分を一つ一つ洗い出し、一緒に改善していく作業をしていくのですが、客観的に振り返ることが苦手な方は、主観と客観に大きなズレが生じているため、自分が弾けていないことに気づいていません。そのため、フィードバックを素直に受け入れることができず、自己流で弾き続けてしまうので、上達することができません。

逆に、自分の演奏を客観的に判断できる人は、主観と客観のズレが少なく、常に自分の演奏に対して問題意識を持っているので、フィードバックをすぐに受け入れ、どんどん改善して上達していきます。

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最近はiPhoneなどで簡単に録音や録画ができますので、自分の練習を録音や録画で振り返り、少しずつ修正していくと効率的に上達します。

4. 先を見越して考える力がある人

ヴァイオリンを演奏する際、弓の配分、スピード、強弱など、常にフレーズの先を見越して計算しながら弾く必要があります。また、どの練習にどれくらいの時間を割けば間に合うか、という練習計画を立てる際にも計画性が必要となります。逆算して計画するスキルがある人は、この点でとても有利です。

5. 耳やリズム感、体幹も上達に影響

  • 語学に長けている方は耳が良く、音程習得が早い傾向にあります。

  • ダンスなどでリズム感のある方は、拍がしっかり取れ、リズムが崩れにくいです。

  • ​スポーツが得意な方は体幹がしっかりしており、また、体の動きをコントロールする能力が高いため、技術の習得が早い傾向にあります。

これらの要素は必須ではありませんが、こうした経験は上達を助けることが多いです。

練習時間が少ないことは問題ではない

大人の生徒さんからよく聞くのが、「仕事が忙しくてあまり練習時間が取れない」という悩みです。

しかし実際には、練習時間の長さそのものが上達を決めるわけではありません。

ヴァイオリンでは、「どれだけ長く弾くか」よりも、何を意識して弾くかが重要です。レッスンで伝えられたポイントを理解し、それを意識して練習することができれば、短い時間でも十分に上達していきます

逆に、方向がずれたまま長時間練習してしまうと、悪い癖をどんどん蓄積していくことになります。

忙しい大人の方こそ、限られた時間の中でポイントを絞って練習することが大切です。

大人からヴァイオリンを始めてどれくらいで曲が弾けるようになる?

できるだけ早く曲を弾きたい気持ちはよく分かります。
しかし、ヴァイオリンの演奏技術は非常に複雑で、独学はおろか、レッスンを受けてもなかなか習得が難しいのが事実です。
​最初の半年〜2年(人によって期間はまちまちです)で基礎練習に集中できるかどうかが、その後「曲が弾けるようになるか」の鍵になります。

弓の動かし方、指の動かし方、音程、リズム、身体の使い方など基礎をしっかり身につけることで、後の曲の演奏が格段に安定し、「何年習っても弾けるようにならない」という大人のヴァイオリンあるあるを回避することができます。

​曲に挑戦できる目安として

  • 左手のファーストポジションでの指の位置が定まって、安定して音程が取れるようになり、指がある程度早く動かせるようになる。

  • 右手は弓を弦に対して直角に弾く動きに慣れ、移弦やスラー、弓のスピードをコントロールすることができるようになる。

  • ​リズムが正確に数えられ、メトロノームに合わせて音を出すことができる。

​このようなことが挙げられます。

後述の"よくある失敗例"で書いたような遠回りさえしなければ、早い方だと半年、忙しくてあまり練習できない方でも2年くらいで簡単な曲は弾けるようになります

大人が陥りやすい、よくある失敗例

大人のヴァイオリン学習で、よく見かける失敗があります。
その1つは、自身の演奏レベルに合わない曲に手を出してしまうことです。

憧れの曲に早く挑戦したいという気持ちから、レベルに合わない曲に手を出してしまうのです。

例えるなら、まだ教習所に通い始めて1週間しか経っていないのに首都高に出てしまう。もしくは、基本のスケーティングもままならず、スケートリンクに入った途端に転んでいる人がジャンプに挑戦している。こんな感じです。

基礎がほとんどできていない状態でレベルに合わない曲を弾き続けると、悪い癖がどんどん身についてしまいます。この癖は直すのに非常に時間がかかり、場合によっては完全には直らないこともあります。

本来は、今取り組んでいる課題を7割くらいの完成度まで仕上げてから次に進む必要があります。ところが、3割くらいの出来で「もうできた」と思って次に進もうとしてしまう方が一定数いらっしゃいます。その結果、音程は不安定で、リズムも崩れ、弓は蛇行し、音はスカスカ。「ギコギコ演奏」ならまだ良い方で、何の曲を弾いているのか分からないような演奏になってしまうこともあります。

なぜこういうことが起きるのか。この問題が起こる理由はいくつかありますが、主なものは次の3つです。

大人は練習を客観的に見てくれる人がいない

子どもの場合、親がレッスンや練習に付き添うことが多く、ある程度客観的な目があります。しかし大人の場合、自分の練習を客観的に見てくれる人がいないため、「できているつもり」になってしまうことがあります。その結果、どんどん先を急いでしまいます。

 

最初の先生が基礎をきちんと教えなかった

「大人の生徒さんは楽しい時間を過ごすためにレッスンに来ている」という前提で、手間のかかる基礎をしっかり教えずに曲をどんどん進め、弾けていなくても褒め、生徒さんの機嫌を取るレッスンをしてしまうケース。生徒さんを「お客さん」として扱っている教室に多いパターンです。

大人のプライド

大人から始めると、どうしても幼児が弾いているような簡単な曲を真面目に練習することに抵抗を感じてしまうことがあります。その結果、難しい曲に手を出してしまい、どんどんフォームや音程、リズムが崩れ、結局簡単な曲も弾けるようにならないまま何年も過ぎていく、というパターンです。

 

大人のヴァイオリンで上達しない悩みを抱えている方のほぼ全員が①〜③のどれか、もしくは全てに当てはまっています。むしろ、それ以外の理由で上達しない方は稀です。身体能力や耳の良さよりも、取り組む姿勢の方が上達には大きく影響します。

 

弾けない曲をぐちゃぐちゃに弾くより、シンプルな曲をきれいに弾く方がずっと魅力的です。音楽の魅力は、曲の難しさではなく、どんな音で演奏するかにあります。それに気づけるかどうかが上達するか否かの分かれ道となります。

①レベルに合わない曲を弾いてしまうパターン

② 「謎メソッド」にハマってしまうパターン

最近よく見られるのが、YouTubeやブログなどで紹介される「〇〇式」などと呼ばれるよくわからないメソッドを信じてしまい、上達しないどころか、かえって後退してしまうケースです。

特に大人の趣味の方は、「早く上達したい」「何か特別なコツがあるのでは」という気持ちから、このような情報に飛びつきがちです。上達が思うようにいかないとき、原因を「練習の質」ではなく「弾き方」に求めたくなる心理が働くためです。

これは、いわば謎ダイエットに飛びつく心理と同じです。ダイエットしたつもりが、リバウンドで前より体重が増えてしまった……。そんな状況が、ヴァイオリンの練習でも起こります。

「これさえやればすぐできる!」「こうすれば楽に弾ける!」という単純化されたメッセージは、挫折しかけた心に強く刺さります。「これなら私でもできるかも…!」とよくわからないメソッドに惑わされてしまう――。これは大人バレエや大人の英会話などでも見られる、典型的な失敗パターンです。

もちろん、情報の中には有益なものも多数あります。しかし、十分な専門教育を受けていない方や十分な技能を有しない方が発信している例も多く、ビギナーの方がそれを見分けるのは非常に難しいのが現実です。

謎メソッドにはプラセボ効果があり、上達した気分になったり、やる気が出たりして練習が楽しくなることはあります。ただし、本当に上達するかどうかは別問題です。結局のところ、基本に沿って正攻法で取り組むことが、長い目で見て一番確実な近道です。

近道をしようとして、気づいたら全く違う遠い場所に行ってしまった――そんなことがないよう、オーソドックスな基礎を身につけるためには、最初の段階で信頼できる指導を受けることがとても大切です。

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ポイント: 情報を選ぶ際には、出身大学やコンクール歴、プロとしての演奏歴、指導実績(生徒のコンクール入賞歴や進学実績など)といった、信頼できる裏付けがあるかどうかを確認することが大切です。また、ヴァイオリンの場合、メンデルスゾーンやチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲といった主要な協奏曲を人前で演奏できる程度の技量があるかどうかも、一つの目安になります。

上達に役立つ「守破離」の考え方

「守破離(しゅはり)」は日本の伝統芸能や武道で使われる学習のプロセスです。

​日本人にフィットしやすい学習プロセスで、ヴァイオリンの習得にも応用できます。

芸事の世界には「守破離(しゅはり)」という考え方があります。

まずは先生の教えを素直に守り、基本をしっかり身につける段階(守)。次に、学んだことをもとに自分なりの工夫や理解を深めていく段階(破)。そして最終的には、型を離れて自分の表現として音楽を作っていく段階(離)です。

ヴァイオリンも同じで、最初の段階では基礎をしっかり身につけることが何より大切です。基本が安定してはじめて、その先の自由な表現につながっていきます。

​ヴァイオリンが弾けることの価値

最初の基礎の段階で離脱してしまう人が多いため、ヴァイオリンをある程度正しく弾けること自体、とても貴重で価値のあることです。コツや秘訣を探すよりも、正しいやり方をコツコツ続けてきた人だけが身につけられるスキルだからこそ、他人にはなかなか真似できない。そんな面白さや誇らしさもあります。

そして、大人からヴァイオリンを学ぶ楽しみは、少しずつできることが増えていくその過程にあります。難しいからこそ、できたときの喜びはひとしお。スマートフォンひとつで多くのことがすぐにできてしまう時代だからこそ、時間をかけて積み重ねることでしか得られないものの価値や輝きは、むしろ増しているように感じます。

自分の音を聴きながら演奏を整えていく積み重ねの中で、音楽の楽しさや奥深さ、そしてアンサンブルの喜びを感じていただけたら嬉しく思います。

ヴァイオリンレッスンにご興味がありましたら、レッスンの内容や方針については下記のページでもご案内しています。
大人のヴァイオリンレッスンについて(Atelier Belle Sonorite)

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